ウインターカップ2021 第74回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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静岡県

2021年12月13日

静岡県男子の近年の状況は、飛龍・藤枝明誠の二強を中心に優勝経験がある浜松学院・静岡学園・沼津中央、そして新興の浜松開誠館が上位争いを展開している。今年度のインハイ予選では決勝リーグ・優勝決定戦で飛龍と浜松開誠館がトリプルオーバータイムという珠玉の名勝負を展開、最後は飛龍が振り切り4連覇を飾った。

写真提供:(一社)静岡県バスケットボール協会

ウインターカップ予選決勝でもこのカードが再現。インターハイ予選と同様に最後の最後まで勝敗の分からない熱戦が繰り広げられるも、浜松開誠館が逃げ切る形で勝利。同校として、県レベルの大会を初めて制覇し、ウインターカップ初出場を決めた。敗れた飛龍もインハイベスト8の実力を持ったチーム。その飛龍に追いつけ追い越せと各チームが切磋琢磨した結果、県全体のレベルが底上げされ、質の高い「群雄割拠時代」に突入したと言える。またコロナ禍で各上位チームとも留学生の確保が難しくなり、留学生に頼らないチーム作りを始めているのも特徴である。

男子の浜松開成館には際立った選手はいないが、「チーム開誠館」一丸で初の全国大会出場を勝ち取ったと言える。先述のどおり、県総体の優勝決定戦でトリプルオーバータイムの末涙を飲んだ悔しさが今回の躍進につながったことは間違いない。
キャプテンの海野来晟は心身共にチームの屋台骨を支える存在、チーム全体を広い視野で把握し、時には監督・コーチと選手間の潤滑油となり、黙って自分から率先して行動に移す「ラスト・サムライ」。派手な3ポイントシュートなども時折放つが、持ち味は何と言っても自分を犠牲にしたオフボール時の動きとリバウンド・ルーズボールなどの球際に見せる泥臭いプレーだ。
須和部陸は大怪我から不死鳥のように蘇った「フェニックス」。ここぞという勝負の時機を見逃さず、決勝戦でも得点を重ねチームの勝利に貢献した。インサイドの鈴木楓大は197センチという恵まれた長身を生かしきれず悶々とした日々を送っていたが、ウインターカップ予選を通じて大きく成長。いい位置取りからリバウンド、セカンドショット、ローポストでのプレーができるようになった。「未完の大器」が開花した感がある。

写真提供:(一社)静岡県バスケットボール協会

コーチはJBL時代、2度のMVPを獲得し、日本代表のキャプテンも務めた後藤正規。ただし現役時代の数々の栄光とは裏腹に指導者になってからは苦労の連続を重ね、何度もあと一歩のところで全国大会を逃してきた。今回苦節10年目にして初の全国大会出場を達成したことで、「名選手、名監督にあらず」という言葉が彼には当てはまらないことを証明したと言えるだろう。

女子はウインターカップ予選で浜松開誠館が 6 連覇を達成、「一強独走」の時代が続いている。それを物語るのが、同校の記録で、県内高校大会16連覇、106連勝中、約6年間負けなしの状況だ。各チームともその独走を止めるべく対策を講じてはいるが、近年浜松開誠館が唯一の泣きどころであった「高さ」を克服すべく、長身選手の補強に力を入れ始めたため一層実力差が離れつつあるようにも思える。
その中でも県新人決勝で女王を土俵際徳俵まで追い詰めた名門・常葉大学常葉、高さとテクニックで常に上位をキープし続ける市立沼津、昨年の大会で33年ぶりに決勝進出を果たした古豪・浜松市立などが浜松開誠館を猛追している。しかしながら、浜松開誠館の強さが県内ではひと際目立ち、全国一の激戦区・東海ブロックにあっても桜花学園、岐阜女子に続き常に三番手をキープ、すでに全国トップレベルのチームと言える。
今年の特徴はキャリアを重ねた下級生中心のチームであること。エースの2年生ガード・萩原加奈は広い視野から繰り出される巧みなパスワークと鋭いドライブ、果敢に放たれる3ポイントシュートが得意のオールラウンダー。インサイドには170㎝代後半の西田妃那、蔀桃菜、前田理咲子という全国でもトップレベルの選手が入れ替わり立ち代わりコート狭しと動き回る。加えて選手層も非常に厚く、控え選手が出てもコート上の戦力は落ちない強さがある。試合展開によって相手に競られても、監督・選手とも動じず落ち着いていて、冷静沈着に挽回し勝利を手にする姿はすでに常勝女王の風格が漂っている。

写真提供:(一社)静岡県バスケットボール協会

敢然収束を見ないコロナ禍の中、各チームとも校内練習や練習試合が制限されて、チーム強化に苦慮していた1年が続いた。特に重点的に強化ができる夏休みに入った際、静岡県独自で制定している警戒レベルが「レベル5」に上がって、練習試合や全国大会につながらない大会の全面禁止が打ち出され、自チーム内の練習のみに限定される状況に。その後も「レベル6」「まん延防止等重点措置」「緊急事態宣言」などひっ迫状況が日に日に上昇し、一向に明るい兆しが見えずに大会の実施すら危ぶまれる時間が2ヶ月以上続いた。
その間、各チームともチーム内での自己研鑽に励み、練習試合の解禁そして大会の実施を願って日々練習に精進し続けた。ウインターカップ県予選開幕2週間前の10月1日にようやく「緊急事態宣言」が解除され、試合勘を取り戻すべく各チームも練習試合を組んで実践経験を積んだが、長期間他チーム相手の対人練習をしていなかったせいもあり、思わぬケガなどに悩まされるチームもあった。しかしながら、昨年春に発令された前回の緊急事態宣言時の反省を生かし、今回は警戒レベルの上昇や各種宣言の発令直後に県協会の指針をいち早くHP等で周知徹底し、指針の足並みを揃えた影響で全種別・全チーム平等に対応できたことは大きな収穫であった。

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